光に包まれたキミ



 おだやかな光の注ぐ教室の中。ボクたちはそこで出会った、それはボクだけが知ってる秘密。
 いつも優等生でありつづけた自分に嫌気がさして、ボクは中学生活の中で初めて授業をさぼった。
 その授業が卒業式だった。
 普段は人が溢れて騒がしかった廊下も、今は外で降り注ぐ雨の音だけが響いている。しばらくその光景に引き込まれていると、気づいたら雨はやんでいた。

 静かなこの空間を壊すまいと、そーっとボクは教室へ足を運んだ。たくさん並ぶ教室を横目に廊下を歩いていたら、その内の一つに人の姿を見つけた。
 それがキミだった。
 椅子に腰かけて頬杖を突き、窓の向こうの電線から滴り落ちる雨の雫を眺めるキミに、ボクはみとれてしまった。
 目から同じ雫を滴らせながらそれを眺め続けるキミに。

 でも、キミをそんな風にさせた『何か』のことを考えてボクの心はざわめいてしまった。
 そしてボクはその場から逃げ出した。今まで一度も動くことのなかったボクの心が、初めて出会っただけのキミに、会話さえもなしに揺れ動かされてしまったから。

 あのとき逃げたことをボクは後悔してる。ボクはずっとキミを捜していた。
 でもキミは跡を残すこともなく何処かへ消えてしまった。
 みんなはこの話を聞くと辛そうな顔をしてボクに同情する。でもボクは全然辛くないよ。だってボクは信じているから。

 遠く離れたとしても、ボクたちはきっとまた出会うってことを。
 奇跡でも偶然でもないよ。
 だってこれは、必然だから。




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